ホームホモSMコラム集>あの日のこと

あの日のこと

 同性とも性的な関係を持ち得るんだ、と自覚する瞬間は、このサイトを見て頂く方なら、誰もが経験ある事なのかもしれません。僕の場合も、思い返すとそんな経験がありました。
 それはたぶん、まだ僕が5、6歳頃の事だったと思います。夏休みに母親の実家に泊まりに行っていた時の出来事です。母親の実家は地方でも大都市だったので、割と大きい書店がありました。僕は本が好きだったので、いつもそういう大きい書店に行くのを楽しみにしていました。その時も、書店の各フロアを巡って、ちょうど帰るときでした。出口の自動ドア付近が混雑していて、ちょっと立ち止まったのです。母親は前で、僕は後ろにいました。すると、さらに後からきた人が僕の後ろに並んだ気配がしました。そして次の瞬間、その人が僕の手の甲を軽くつねったのです。僕はビックリして身体を固くしました。後ろを振り向くことはできませんが、かなり背の高い大人の男の人のようでした。初めての経験に怖くなり、僕はただ時間が過ぎるのを祈っていました。
 しかし、その話は、それまでです。やがて列は進み出し、僕は母親とともに店の外に出て帰路につきました。
 その男の人は、単にイライラしていて、とっさにそんな行動をとってしまったのかもしれません。しかし僕にとっては、その男性から与えられたわずかな痛みが、性的な記憶となって、数十年たった今でも記憶されてしまったのです。

戻る