応対してくれるマスターは、いつものようにニコニコしているのですが、僕はぎこちなく服を脱ぎ始めました。服を一枚ずつ脱いではロッカーに入れ、とうとうトランクスを脱ぎ落とした時、僕の股間をちらっと見たマスターが、にやにやしながら声をかけました。
「自分で剃ったのか?」
「は、はぃ…」
 こんな短い会話でも最高に興奮し、マゾ心が刺激されます。たとえれば、自分の服を脱いで、ハダカになってからも、さらにもう一枚、はぎとられたような恥ずかしさです。僕はMを示す色のフンドシを締めると、お気に入りの赤いロウソクをカバンから取り出しました。
「そんなモノで遊んでるのか」
 マスターがまた、おだやかな笑みを浮かべて話しかけます。SMサロンでは、イヤらしい事をするのを指して、”遊ぶ”と表現する事があるのです。例えば、帰り際に、
「今日はたくさん遊べたか?」
と聞かれれば、今日はお相手にじっくり可愛がってもらえたか?のような意味ですし、また、
「一人で遊んでてもいいんだぞ」
というのは、一人でオナニーして気もち良くなっててもいい、というような具合です。
 人には言えないような背徳の行為を、さらっと”遊ぶ”と表現してくれる、このあたりのさわやかな感じも、僕がSMサロンから離れられない一つの原因なのかもしれません。自分の性癖を、羞恥心を乗り越えてさらけ出してもいいような、安心できる雰囲気なのです。もっとも、SMサロンのマスターなら、お客さんのそのような心の葛藤は分かっていて当然なのですが、僕はいつも、受付の時や、帰り際にかわすマスターとの少しの会話に、心がふっと楽になる気がしたものでした。

 そしていよいよ僕は、愛用の赤いロウソクを手に、待合室のドアを開けたのです。その日は待合室に数人の人がいて、寝ころんでテレビを見ている方などもいたと思います。しかし僕の興味はすでに、黒いカーテンの奥、プレイルームに向いていました。とりあえず座って、赤いロウソクを片手に持ったまま、僕はドキドキしながら次の行動を頭に描きました。お茶を入れて、正座して飲んだりしていると、隣のプレイルームからは、イヤらしいあえぎ声が聞こえてきました。何人かの人の気配もします。今日はお客さんが多い日なのでしょうか、向こうでは、すでにプレイが始まっているようだったのです。僕はますます興奮し、緊張しながら、赤いロウソクを握りしめていました。

  
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