ある夜の出来事2

 縛られた僕の後ろに回ると、マスターは僕を抱くように両手を伸ばし、僕の乳首を触り始めました。優しく撫でたり、きつくつねったりしながら、マスターの指が、自在に僕の乳首を責め立てていきます。縄できっちり縛られて、熱くホテり始めた僕の身体に、ズキズキうずく乳首の快感が満たされていき、僕は恥ずかしく身体をくねらせました。ペニスもびんびんに勃起して、透明な先走り汁がこぼれていきます。首筋にはマスターの吐く息がかかり、僕は、マスターの思いのままに調教される自分の姿に酔っていました。
 ひとしきり僕の乳首を責めたマスターは、
「逆さで吊られた事はあるのか?」
と、僕に尋ねました。それまでにも僕は、何度か吊りを経験していたのですが、まだ、完全に逆さに吊られたことはありませんでした。頭が床に着く程度の逆さ吊りを、体験したことがあったくらいです。それで僕が、
「ちょっとだけなら…」
と答えると、マスターは、
「じゃあ、逆さに吊ってやろうか。きつく縛られて感じるんだろ?」
と、言ってくれたのです。マスターになら、そんなにハードな吊りをされても大丈夫だろうと思い、僕は目を伏せてうなずいたのでした。
 マスターは、後ろ手に縛られたままの僕を、足を伸ばして座らせました。そして、両方の足首に、それぞれタオルを巻きつけていきます。足首を縄で結んで吊り上げるので、なるべく負担がかからないようにするためです。そのプレイルームには、吊りができる滑車の設備もあって、Yの字で逆さ吊りにできるように、左右の滑車から、縄が垂れ下がっていました。マスターは、タオルを巻きつけ終わった僕の足首に、垂れている縄の端をそれぞれ巻きつけて結び、しっかりと固定したのです。
 両足首に、それぞれ縄を縛り終えると、マスターは僕に、そこに寝て足を上げるように言いました。僕が上半身を横たえると、マスターは、左右の滑車にかかった縄を引っぱり、ピンと張っていきました。僕の両足はゆっくりと左右に開かれ、じょじょに上に持ち上げられていきます。ある程度、両足が持ち上がったところで、マスターは僕の身体を抱え、もう少し滑車に近づくようにずらしてから、さらに縄を引っぱりました。すると、とうとう僕の足はY字型にまっすぐ伸ばされ、やがて腰が持ち上げられ始めました。足首に強い力がかかり、裸で縛られた僕の身体が、ぐいっ、ぐいっと持ち上げられていきます。
 恥ずかしい身体の全てをさらけだし、モノのように逆さに吊り上げられる…。普通に生活している限り、こんな体験をすることはないでしょう。裸の身体を後ろ手に縛られ、吊り上げられる、この段階でもう、僕はマゾの快感に陶酔していたのです。頭に血がのぼり始め、少しぼうっとしながらも、僕はその瞬間瞬間を、精一杯あじわおうとしていました。

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