初めてSMサロンに行ったのは、22才の頃です。たぶん8月1日だったと思います。新しい世界に飛び込んだ夏の日だったので、日付けは今でも覚えています。
ホモの世界に興味を持ち始め、また以前からノーマルなSM、いわゆる女の人が縛られているようなものでも興奮を覚えていた僕は、一人暮らしを始めてから、自分で身体を縛ったりして楽しむまでになっていました。自分がM女に感情移入して楽しむという点で、ノーマルなSMと、ホモ行為には共通のものがありました。男の自分がM女の気分になって、S男性に責められると、外からは男性同士のプレイに見えるわけです。だんだん、ほんとうに男の人に縛られて、いじめられてみたいという欲求が高まっていました。
ちょうどその頃、あるゲイ雑誌でSM特集記事が組まれました。そこには、縛り方などのほかに、体験レポートが載っていたのです。記者が実際にお店に行って、縛られたり責められたりした内容と共に、お店の中の様子も詳しく図解されていました。
男の人に縛られ、責められることへの欲求が限界に達した僕は、思いきってそのお店に行ってみることにしました。それまでに男性経験はもちろん、女性経験もありませんでしたが、アナルオナニーはしていました。なので、もしアナルを責められても大丈夫だろうと思いましたし、責められたいという興味もありました。ハダカで縛られたまま、男の人にペニスやアナルを触られイジめられるという想像の世界を、僕は一気に体験したくなっていました。
その日の午後、電車を乗り継いで最寄り駅まで行くと、駅前の公衆電話からお店に電話しました。店の場所を教えてもらうためです。一般的に、最寄り駅に到着してから電話しないと、お店への道順は教えてもらえないようです。
教えられたマンションの一室に行き、呼び鈴を鳴らしました。電話の応対をした方がドアを開けてくれ、中に入りました。入ったところに靴箱があり、靴を脱ぐように言われます。そのあと、会員証を作ってもらい、入室料を払いました。会員証は単に番号を発行するだけなので、料金はかかりませんし、プライベートなことも聞かれません。ただ、ここに来た時の呼び名を聞かれたので、好きな名前をつけました。このあたりのシステムはだいたいどこも同じだと思います。普通の部屋の一室といった雰囲気で、緊張するような場所ではなかったと思います。もっとも、これから起こることに対して、相当緊張していたのですが…。
つづく
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