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人妻露出マゾ・真由美
第一章 人妻向けのお仕事
人は誰でも、少しのきっかけがあれば、まったく違う自分に変わってしまうことがある。しかし本当は、心の中の小さな種が、大きく育って開花しただけなのかもしれない。
これは、そんな経験をした、ある人妻の淫らな物語(ストーリー)である……。
1
(はぁ、どうすればいいのかしら……)
5月のある晴れた日、通勤ラッシュでごった返す夕方の電車の中で、真由美は膝の上にハンドバッグを抱えて座っていた。バッグの中には、さっき受け取ったばかりの100万円の札束が入っている。あぁ、どうしよう、と、真由美は家に帰ってからも悩み続けた……。
それは、その日の午後の話だ。電話で教えられた古びた雑居ビルの一室に、その事務所はあった。おそるおそる扉を開けて、真由美は中に入った。そこは殺風景な部屋で、スチールデスクや背の低いチェスト、ソファーなど、最低限の家具以外の部屋のほとんどが、ぽっかりと空いている。デスクに向かって座っていた男が、真由美が入って来たのを見ると立ち上がり、こちらに来ると名刺を差し出した。
名刺には、次のように印刷されている。
人妻露出クラブ
主宰 坂ノ下 大
電話 ◯◯─◯◯◯◯─◯◯◯◯
「ようこそお越しくださいました。まぁ、お座り下さい。私は坂ノ下と申します」
男は部屋の隅に置いてあるソファーを指し、また自分はスチールデスクに向かって座った。
「ひとづま、ろしゅつ、くらぶ……?」
「そうです。奥さんのような魅力的で若々しい女性の方には、ピッタリのお仕事ですよ」
坂ノ下は高級そうなスーツを着こなした、物腰の柔らかい男だった。歳は40代後半、いや、50歳を超えているかもしれない。
「契約金としてまず100万円、お支払いいたします」
坂ノ下は椅子を後ろに回すと、壁ぎわの金庫を手早く開けて、言葉通りに100万円の札束を、ポンっと机の上に置いた。突然の展開にびっくりし、真由美は100万円の札束を見たまま、しばらく固まってしまった。
「そっ、それで、あの……、『人妻露出クラブ』というのは、そもそも、どういったお仕事をするところなんでしょうか?」
気を取り直すと、真由美は手もとの名刺を見てたずねた。
「あははっ、そうでしたそうでしたっ。奥さんが魅力的なので、つい先走っちゃって。これはどうも済みません」
坂ノ下は笑顔を見せた。白い歯がまぶしい。
「『人妻露出クラブ』というのは文字通り、奥さんみたいな”お美しい”人妻の方に、露出をして頂くクラブなんです」
「美しいだなんて、とても、そんな……。それで、あのっ、ろ、露出……?ですか……?」
「まぁ、いつまでも勿体ぶっていてもしょうがないので、言っちゃいますね。当クラブは『野外露出』、つまり、裸で外を歩いてもらう事を目的としたクラブなんです」
真由美は心臓が止まりそうになった。
「えっ、ハっ、ハダカで、外を、ですか……!?」
「そうです。奥さんも見たことがありませんか?女性が外を裸で歩いているビデオを。いわゆるAV、ですね」
「い、いえ、そのようなものは、私は見たことは……」
坂ノ下はまた笑いながら言った。
「そうですか。まぁ、言われてみればそうでしょうね。AVの中でも特殊なジャンルのものですから」
「はぁ……」
「率直に言うと、奥さんみたいな人に、街の中を素っ裸で歩いてもらって、それを撮影して販売しているんです。うちのクラブは」
「えぇっ!?」
思いもよらない話をたたみかけられ、真由美はまた絶句した。
「まぁ、特殊なビデオなんで、一般のルートでは手に入りません。通販だけです。しかも、購入の際には身分証の提示も条件ですので、まず流出の心配は一切ない、地下ビデオ、いや、いま流行の言葉だと、インディーズビデオとでも言いましょうか、とにかく、普通の人の目には触れない所で活動しています。私たちは」
「はぁ……」
「それで、いま奥さまを一目見た時から、私はピーンときました。ぜひ私どものモデルとして、ご活躍して頂きたいのです」
「活躍、ですか……?」
「そうです。外を裸で歩いてもらい、それを、私どもの作品にさせて頂きたいのです」
「そっ、そんな……!私ムリですっ!」
「とりあえず、その100万円はお持ち帰り下さい。それでもし、また気が向いたら、その電話番号にお電話下さい。今日はもうお引き取り頂いてかまいませんので」
坂ノ下は、また笑みを浮かべて椅子から立ち上がると、入り口のドアを開けた。
「こんなお金、もらえませんわ……」
真由美は坂ノ下とちょっと押し問答をした。しかし坂ノ下は、
「あっ、じゃあ、こうしましょう。一晩ジックリお考えになられて、その結果、どうしてもダメなら、明日またこちらまでお越し下さい。その時に、そのお金はお返ししてもらえれば」
と、100万円を真由美に押しつけると「次の予定がありますので」と言い残し、バタンとドアを閉めてしまったのだった。
2
押しに弱いのが、真由美の弱点だ。今の結婚も、相談所に言われるがまま、好条件だと思って話を進めた結果が今の有様だった。
真由美はごく普通の、平凡な専業主婦として暮らしている。女子大を卒業してから都内でOLをしていたが、結婚に焦りを感じた28歳の頃、結婚相談所に入会し、幸運にも今の夫、祐太郎と出会うことができた。高身長ではないが、高学歴、高収入、と、真由美にはもったいないほどの男だった。今は都内の某有名メーカーの研究所に勤めている。祐太郎は36歳。ただ、結婚当初からのセックスレスで、経歴よりも女性に興味があるかどうかを教えて欲しかったわ、と思ったほどの淡白さだった。結婚から1年たって、真由美は今年30歳になる。
今夜も祐太郎は遅く帰ってきて、真由美の作った夕食を食べながら、いま取り組んでいる研究の苦労話をした後、風呂に入ってさっさと寝てしまった。本人はいたって充実した一日だったと満足しているのだろうが、真由美にとっては欲求不満ばかりが溜まる。つまり、セックスの事だ。そんな不満を持ったまま暮らしていた今朝、ポストに投げ込まれていたチラシに目が行ったのだった。
高収入なお仕事です、平日午後、人妻募集中、その場で謝礼お渡しできます、などと、ピンクの文字で書かれた小さな紙。(高収入と言えば、おそらくエッチな仕事だろう……)そう考えた真由美は、つい、そこにあった番号に電話してしまったのだった。
ベッドで寝息を立てる夫の横にすべりこんで、真由美は目を閉じ、今日あった出来事を思い出した。
(人妻露出クラブ──)
世間には、とんでもない仕事があるものだ。しかし真由美は、なぜかあの男、クラブの主宰だとかいう坂ノ下が気になってきた。あのさわやかな態度は、いかがわしい職業を生業(なりわい)にする男というよりは、むしろ、銀行か保険会社の敏腕営業マンのように見える。ハダカで外を歩いてもらいます、という坂ノ下の言葉を思い出し、真由美は(とてもそんな事、できないわ……)と思いつつ、ついつい、その光景を想像してしまった。
さぁ奥さん、頑張りましょう、と坂ノ下に励まされながら、一糸まとわぬ姿になった自分が、昼下がりの住宅街を、ゆっくりと歩いていく。想像もできないような恥ずかしさでふるえながら、とうとうその場にしゃがみ込むと、坂ノ下が駆け寄ってきて、奥さん、もう少しです、大丈夫ですよ、と微笑みながら抱き起こしてくれるのだ。ハダカで歩いている姿を通行人にも見られちゃうのかしら、ダメダメ、そんな破廉恥で危険なことはできないわ、と考えながらも、真由美の下腹部は、火照って熱くなり始めた。
結局その夜、真由美は祐太郎の横でコッソリとオナニーしてから眠りについたのだった。
続く
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