夜、自分の部屋でくつろいでいたミサキの携帯が鳴った。知らない番号だ。疑いながらも出てみると、それは真理子からだった。
「あっ、先生。こんばんわ。どうして、私のケイタイ知ってるんですか?」
「今日、ミサキちゃんの様子がおかしかったでしょ?心配だから、ユキちゃんに番号教えてもらっちゃったの。悪かったかしら…?」と、真理子は遠慮がちに言った。
「いいえ、とってもうれしいです。今日は本当にごめんなさい…」
私のこと気づかってくれてるんだ、そう思うと、ミサキは幸せな気分になった。そして、真理子の優しい言葉に乗せられるままに、しばらく会話がはずんだ。
すると突然、真理子が切り出した。
「先週の土曜日、私の車のぞいたの、ミサキちゃんじゃない?」
それを聞いたミサキは、言葉につまった。
「……」
「やっぱりそうだったのね…。なんとなく、そうじゃないかなぁって気がしてたの…。まずいとこ見られちゃったなぁ」
「えっ?私、なんにも見てません。女の人と、一緒にいたのはわかりましたけど…」
「キス、してたでしょ、私…」
その言葉に、ミサキは何も答えることができなかった。
(やっぱり、そうだったんだ…。キス、してたんだ…)
真理子は落ち着いた声で、優しく言った。
「あんなことしてるの知られたら、良く思わない人もいるでしょ?先生ちょっと不安だったの…。でも、見られたのがミサキちゃんだったから、先生、安心したわ。秘密よ。ぜったい誰にも言わないでね」
ミサキは、鼓動が高まって来るのを感じながら、震える声で答えた。
「はい、もちろんです。言いません…」
「よかったぁ、これからは、先生になんでも相談するのよ、エッチなことでも(笑)」
また明るい声で真理子は話しかけると、別れのあいさつを交わして電話を切った。
(先生、やっぱりレズだったんだ…)
電話を終えてからも、ミサキの興奮はしばらくおさまらなかった。ベッドに入ってからも、真理子が女の人とキスをしている映像が頭に浮かんで、なかなか眠れなかった。
「ううん、先生…。こんなこと、いや…」
夢の中で、なぜかミサキは真理子に抱きしめられていた。うしろから、細い手で髪をかきあげられ、あらわになった耳たぶに、ふうっと優しい息を吹きかけられる。瞬間、身体の芯がじゅんっ、と熱くなり、ミサキは抵抗をやめた。真理子はミサキを自分の方に向かせると、そっとくちびるを重ねていった…