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「あの子、大学の後輩だったの。ずっと、つきあってたんだ。でも私が就職してから、遠距離恋愛になっちゃって…」
真理子は、そんな告白をした。
「新しい恋人、できちゃったみたいなの…」
そう言うと、真理子は、さみしそうな表情を浮かべた。
「相手なんて、またすぐに見つかりますよ」
 女性しか愛せない真理子の気持ちが、ミサキに分かるわけではなかった。しかしミサキは、とりあえず明るいトーンで、真理子をはげました。
「そうよね…。うん、ミサキちゃん、ありがとう」
 そう言いながら、真理子は、潤んだ目でミサキの顔をじっと見つめた。そして次の瞬間、すうっとミサキに近づくと、真理子はミサキの身体を抱きしめたのだ。
 一瞬、あまりのできごとに身体を固くしたミサキの耳もとで、真理子はささやいた。
「今日、泊まってくれない?先生、一人で居たくないの…」
かすかに、ワインの香りが匂った。ミサキは、
「はい」
と、小さな声でうなずいていたのだった。

「ええ、それはもちろん大丈夫ですよ。明日の朝、お送りしますから。それでは、おやすみなさい」
 丁寧にあいさつすると、真理子は受話器を置いた。ミサキの家に、電話していたのだ。
「お母さんの許可も頂いたから、安心して」
まだぼうっとした表情を浮かべたままのミサキに、真理子はそう、声をかけた。
「いきなり抱きついたりして、ごめんなさいね、ミサキちゃん。いやだった?」
ミサキの隣に座ると、真理子は謝った。
「え、えぇ。突然だったから、びっくりしました…」
顔を赤らめながら、ミサキは真理子に言った。
「さぁ、もっと食べてね」
そうミサキにお菓子をすすめながら、真理子は2杯目のワインをグラスに注いだ。
「そうだ、ミサキちゃんも、ちょっとだけワイン、飲んでみる?」
真理子はそのグラスを、ミサキに手渡した。
「えぇ、いいんですかぁ?」
 そんなことを言いながらも、興味津々のミサキは、それを一口、口に含んだ。ほのかに甘い液体が、口いっぱいに広がっていく。うっとりとしながら、ミサキはそれを咽に通した。
 

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