第二章

 僕は、真紀のワンピースの襟元にあるホックを外すと、ファスナーを下ろしていった。真紀の白い背中が、だんだんあらわになってゆき、そこから黒いブラジャーがのぞき始める。力の抜けた真紀の身体を抱きしめながら、僕は真紀のワンピースをゆっくりと脱がせていった。やがて黒い上下の下着姿になった真紀は、ふとんの上にヒザをかかえて座ったままで、もじもじと、恥ずかしそうに身体を動かした。真紀の白い肌と、黒い下着のコントラストが、僕の欲情をかき立てていく。僕は、真紀の両腕をつかむと後ろにまわし、手首を腰のあたりで重ねると、二つ折りにした赤い紐の折り目の部分をそこにくぐらせ、巻きつけた。そして、真紀のヒジを直角になるように押さえつけると、手首をまとめてぎゅっと縛った。
 その瞬間、真紀が、
「ふぅん…!」
と、息を吐き出し、小さく身体を震わせたのだ。真紀の頭はがっくりうなだれ、垂れ下がった髪は、顔全体を覆い隠している。そんな反応を見たのは、もちろん初めてだった。縛られるだけで陶酔する、いわゆる”縄酔い”を起こす女性がいるということを知ってはいたが、真紀はまさにそのタイプの女性だったのだ。
 前のめりに倒れそうになる真紀の身体を片手で抱くと、僕はもう一方の手で、手首を縛った紐を左側から前に回して乳房の上にかけ、右側から後ろにと一周させた。そして、後ろに持ってきた紐を引っぱり、手首の紐にからめると、もう一度前に回して今度は乳房の下にかけ、再び後ろに回して締めつけながら、手首の紐にしっかりと結んだ。紐をぐいっと引っぱる度に、真紀の身体がぐらっと揺れて、目を閉じた真紀の顔が、髪の間からかすかにのぞいた。
 真紀の乳房に紐をかけ終えると、僕の気持ちはようやく落ち着いてきた。ここまで来れば、もう上半身はしっかりと固定され、動く事はないからだ。あとは、自分のペースで仕上げをすればよかった。僕は、余った紐の両端を持つと、手順通りに、真紀の左右の脇の下からそれぞれ紐の端をくぐらせ、乳房の下を縛った紐に引っかけると、後ろに引き絞った。そして、二本の紐をまとめて背中で結ぶと、それを真紀の左肩から前に回して、乳房の下を縛った紐のまん中をくぐらせた。そして今度はそれを右肩にかけ、ちょうど胸のまん中でV字になるよう後ろに送ると、最後に背中のところで固定した。

 そうやって、なんとか縛りを完成した僕は、身体を少し後ろにずらし、座った真紀の上半身を、僕の方に寄りかからせた。今度は真紀の頭がぐらりと後ろに倒れ、顔が真上に向けられた。真紀の白い胸と、赤い紐、黒いブラジャーの原色が、僕の目に飛び込んでくる。確かに縛ったんだ、そう感じた。僕は、真紀の顔にかかった髪をかき分け、その小ぶりな唇にキスをした。柔らかく温かい真紀の唇、縛られた女性と交わす初めての口づけに、僕は没頭し、魂を送りこんだ。
 そのうちに僕は、真紀を抱えた両手をブラジャーの上から乳房に当てると、ゆっくりと揉みしだいていた。真紀はもう、眠り薬で眠ったように、ぐったりと動かない。思いきって僕は、真紀のブラジャーの下に、手を差し入れた。そして、しっとりと暖かい真紀の肌の感覚を手のひらに感じながら、柔らかい丘の中心へと指を進めた。
 張りのある真紀の乳首を探り当て、指先でつまみ、優しく撫でていくうちに、僕は、真紀の白い乳房を直接たしかめたくなった。背中のブラジャーのホックを外そうとしたのだが、紐できつく縛ったためか、それとも経験が浅いためなのか、なかなかそれは外れそうにない。しかたなく僕は、紐の下からブラジャーのカップを何とか引っぱり、真紀の乳房をあらわにした。赤い紐に絞り出される、白い乳房…。夢にまで見た、限りなくエロティックな光景を、いま僕は自分で作りあげていた。
 ふと見ると、真紀が、投げ出した足を、すりあわせるように動かしている。盛り上がった白い太ももの付け根に、黒いパンティーがぴったりと貼りついていた。それを見た僕は、がまんできずに、とうとう真紀の女の部分に手を伸ばしたのだった。

戻る 続く
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